オリジナルSlimeVR製品「ららとら」の開発のきっかけとコンセプト

はじめに
こんにちは、KooTA(こーた)です。
「ららとら」は、VRやメタバースの体験をよりリアルに、快適にすることを目指して作られたSlimeVRトラッカーです。
今回は私が開発したオリジナルのVRトラッキング製品「ららとら」の開発経緯とそのコンセプトについてご紹介します!
開発のきっかけ
回路屋がメタバースで見つけた「作りたい気持ち」
私は本業で電子回路の設計に携わっています。
日頃から「使いやすくて壊れにくいものを作る」ことに向き合ってきましたが、そんな中、趣味でふと足を踏み入れたのがメタバースの世界でした。
VRChatをはじめとしたバーチャル空間で出会ったのは、自分の身体の動きをリアルタイムにアバターに反映させる「フルトラ(フルボディトラッキング)」という体験。
とても新鮮で、とても面白く、そして興味深く、技術者として「自分もVRトラッカーを作ってみたい」と強く思ったのを今でも覚えています。
自分はギターを弾くのですが、VRでライブ演奏もしてみたくて、トラッキング出来るものを形にしたいと思っていました。
ですが、最初の開発はまったく上手くいきませんでした。
一番最初の開発は、2020年頃、
ベースステーションが赤外線を使っている事は知っていたので、それに着想を得て赤外線を受光して、位置座標を割り出しIMUと組み合わせてトラッキングする回路とファームウェアを組んでみました。
しかし、そもそもまともにトラッキング出来るものは作れませんでした。
メタバースを楽しむどころか、技術の壁に阻まれてばかりの日々でした。
\ 当時のポスト(tweet)がコチラ /

色々試行錯誤して仕組みは上手くいっていたはずなんですが……
この件については色々と語りたいので、別途記事にします……!
それから数年後……
出会ったのが、オープンソースのフルトラッキングプロジェクト「SlimeVR」でした。
SlimeVRは自作を前提としながらも、わかりやすいドキュメントやコミュニティの支援が整っており、技術者としても「これならきちんと動いて、かつ良い製品を作れるかもしれない」と感じました。
それから、自分の得意なハードウェア設計と、ユーザー目線での使いやすさをかけあわせて、オリジナルのSlimeVRトラッカー「ららとら」の開発がスタートしました。
ららとらのコンセプト
単三乾電池式で、すぐ使える安心感
ららとらは、あえて乾電池式を採用しています。
その理由は「すぐ使えて、すぐ交換できる」こと。
充電が切れたら電池を入れ替えるだけ。専用の充電器もモバイルバッテリーも不要で、予備電池さえあればいつでも安心です。
自宅での長時間のメタバース体験など、“ここぞ”というときに頼れるトラッカーを目指しました。
また、充電式の内蔵バッテリーにありがちな劣化リスクもありません。
他には無いデザイン
ららとらは、見た目にも「自分だけのトラッカー」を楽しんでほしいという思いから、黄色い自作基板とクリアな3Dプリントケースという、他にはない個性的なデザインを採用しました。
内部構造がほんのり透けて見えるクリアケースは、ハードウェア好きの心をくすぐるだけでなく、軽量性・放熱性といった実用面にも配慮しています。
さらに、腕や脚に自然になじむよう、装着感にも徹底的にこだわった形状に。曲線を生かしたデザインは、長時間の使用でも違和感がなく、快適なVR体験をサポートします。
お財布にやさしい価格設定
フルトラ環境は揃えるだけでもハードルが高くなりがち。
ららとらは、「できるだけ多くの人に、気軽にフルトラを楽しんでほしい」という思いから、既製品と比べて手が届きやすい価格を実現しています。
もちろん、価格を抑えつつも品質には妥協していません。
コストカットではなく、無駄を削ぎ落とした設計と、回路設計者としての知見によって実現したバランスです。
小さくて軽い。なのに頼もしい
設計から組み立てまで、自作基板での開発にこだわりました。
その結果、ケース・電池込みでわずか66gという軽量化に成功。
装着していることを忘れるほどの軽さと、ストレスのないフィット感を両立しています。
しかもこのサイズ感でも、SlimeVRとしての基本性能はしっかりカバー。
小型軽量と実用性のバランスを追求した、“軽くて強い”一台です。
おわりに ― 使ってくれる人がいるということ
「ららとら」は、もともと自分が“こんなトラッカーが欲しい”という思いから始まった個人的な挑戦でした。
しかし実際に製品として形にし、販売する段階になってみると、想像以上に多くの課題がありました。
ケースの調整、装着感の検証、安全性の確保など、「作ること」と「使ってもらうこと」の間には大きな壁があると痛感しました。
それでも、完成した「ららとら」を誰かが手に取り、使ってくださることには言葉にできないほどの喜びがあります。
「自分が作ったものが、誰かの世界をちょっと広げる」。ものづくりの原点を改めて感じる体験でした。