技術と開発

OSCでclusterを「現実」まで拡張してみる――メタバースと現実をつなぐ、ちょっとニッチな話

seironsyugi

こちらは、cluster公式企画「Cluster #1 Advent Calendar 2025」20日目(12月20日用)の記事です。

メタバースと現実を「繋ぐ」というお話

最近、「メタバースと現実を繋ぐ」という言葉を色々な場所や分野で耳にするようになりました。

Vtuberの方が現実世界でリアルライブを開催したり、

現実世界でプロのミュージシャンがメタバースでは個人名義で活動されていたり。

これら以外にも仕事、イベント、教育などなど…
使われる文脈は違っても、

メタバースは、
現実から切り離された特別な世界ではなく
現実と行き来できる場所

という考え方は共通しているように感じます。

clusterも、まさにその一例と思っています。

clusterにおける「現実と繋がる」方法

clusterで「現実と繋がっている」と聞いて、
まず思い浮かぶのは何でしょうか。

ヘッドマウントディスプレイを装着して、
自分の体の動きをそのままアバターに反映させる。

これは、今ではかなり一般的になりました。

最近ではさらに、

  • WEBカメラと連動してアバターをトラッキング
  • 外部ツールと連携して、ワールドや演出を制御する
  • アバターの細かな表情や目、口の動きをトラッキング

といった使い方も増えています。

そして、その裏側でよく使われているのが
OSC(Open Sound Control) です。

「OSC」という言葉自体は聞いたことがある人も多いと思います。
OSCという言葉を知らない方も、知らないうちにその恩恵を受けているかもしれません。

KooTA
KooTA

こんにちは、この記事を書いたKooTAです!
今回はOSCについて話したいと思います。

OSCって、結局なに?
何ができて、何がすごいの?

と聞かれると、
意外とちゃんと説明できない人も多いのではないでしょうか。

今回は、そんな 「みんな使ってるけど、実はよく知らないOSC」
について、少しだけニッチな話をしてみようと思います。

そもそもOSCとは?

Geminiに聞いてみると…

OpenSound Control(略して OSC)は、電子楽器やコンピュータなどの機器間で、音楽演奏データや制御データをネットワーク経由でリアルタイムに共有するための通信プロトコルです。

これは、カリフォルニア大学バークレー校にある CNMAT (Center for New Music and Audio Technologies) によって開発されました。

とのことです。

ざっくり言うと、

  • 様々な情報を送信できる(整数、小数、文字列、バイナリ etc)
  • リアルタイム性が高い
  • 構造がシンプル(スラッシュ「/」で区切られた階層的なアドレス構造)

という特徴があります。

例えば、
  • 電子ピアノ押した瞬間、その時押した強さ、押された長さが一瞬で通信できる
  • トラッカーがその瞬間の姿勢の情報を取得して、一瞬でその姿勢がアバターに反映
  • スイッチを押した瞬間にワールドの演出がONになり、会場が一気に華やかに

このような情報を、少ない遅延で別のソフトや機器に送る事ができます。

OSCすごい!

「通信プロトコル」と聞くと少し身構えてしまうかもしれませんが、実は私たちは日常的にいろいろなプロトコル(約束事)を使っています。

・あいさつ
 →「こんにちは」とあいさつすると「こんにちは」と返ってくる
 →挨拶が返ってきたので、日本語で今日の天気の話をする
 →会話が完了したので、「失礼します」と伝え終了する

・電話対応
 →電話を掛ける(通信経路を確保)
 →「もしもし〇〇です」>>>「はい〇〇です」で会話開始
 →伝えたい情報を正確に相手に伝える
 →相手の発言から、相手に情報が伝わっていることを確認
 →電話を切る(切断)

より技術的には…

・HTTP / HTTPS
 →Webサイトを見るときに使われているもの

WebSocket
 →チャットやリアルタイム通信で使われることが多い

・MIDI
 →音楽機材同士を繋ぐための、かなり有名な規格

など、多くの通信プロトコルを私たちは日常で活用しています。

これらの通信プロトコルと比べた時のOSCの特徴としては、
「人間にわかりやすい構造」、「コンピュータにとっての柔軟性」、
「リアルタイム性」
に特化しています。

文章やファイルを送るのではく「今この瞬間の状態」を通信するのが得意です。
そのためアバターの動きやギミック制限の用途と相性が良いものになります。

通信プロトコルって結局なに?

通信プロトコル
「どうやって情報をやり取りするか」のルール・約束事
  「どうやって送るか」「どうやって受け取るか」は決まっていますが、
  「何をするか」は決めていません。

そのため、OSCでは

 ・トラッキングデータのやり取りに使用してもよし!
 ・演出などのパラメータ制御や切り替わりの制御に使用してもよし!
 ・センサーで取得した値をワールドギミックに使用してもよし!

何をするか、はあなたが決める!

通信プロトコルによって得意・不得意なジャンルがあるのでやりたいことの性質や要件に合わせてどんなプロトコルを採用すべきか検討します。

OSCの一般的な活用方法

clusterでよく見かけるOSCの使い方としては、

  • カメラトラッキングと連動してアバターを動かす
  • 配信ソフトや音楽ソフトと連携する
  • 外部コントローラーからワールド上のオブジェクトを操作する

といったものがあります。

つまり、現実側の入力をそのままメタバースに持ち込むという使い方です。

KooTA
KooTA

自分はメタバースでギタリストとしても活動しているのでOSCにはとても助けられています。

特にWEBカメラやスマートフォンのカメラを使っての全身トラッキングは、楽器を持ちながら演奏するミュージシャンにとって革新的でした!

OSCのちょっとニッチな活用方法

ここから少しだけ、知ってる人は知っているけれど、あまり広まっていない使い方についての話をします。

OSCは「数値を送れる」仕組みなので、理論上は 物理的なデバイス とも相性が良いです。

ボタン・スイッチ・ダイヤル・各種センサーなど、現実のモノの状態をOSCに変換してclusterへ送ることができます。

現実で何かが起こる⇒メタバースの世界が反応する、という流れが作れます。

するとどうでしょうか?

現実がメタバース側に拡張されていくような感覚になっていきますね…!!

ArduinoとOSCの話

こうした使い方を考えたとき、よく名前が挙がるのがArduino(アルディーノ)です。

Arduinoは誰でも手軽に電子工作やプログラミングができるオープンソースのマイコンです。

Arduino自体はとても手軽ですが、これをOSCで活用してcluster上のワールドに反映させるにはどうすればよいのでしょうか…

そこで自分は、Arduinoのシリアル通信をOSCに変換するツールを作ってみました。

Simple UART to OSC

Arduinoのシリアル通信を手軽にOSCへ!というコンセプトでブリッジツール 「Simple UART to OSC」を製作しました。

これは、Arduinoのシリアル通信 (UART) で送信されるデータを、Open Sound Control (OSC) プロトコルにリアルタイムで変換し、ネットワーク経由で送信するためのシンプルなソフトウェアです。

これを使うことで比較的簡単にOSC通信でclusterにデータをやり取りすることが可能です!

KooTA
KooTA

簡単に言うと、違う言葉を繋ぐための翻訳機です。
Arduino側の実装はシンプルに、PC側でOSCに変換するという考えで作ってみました。

OSCとメタバース

理論上、OSCを使えば、

  • 現実の展示やイベントと連動したワールド演出
  • 物理デバイスとclusterの双方向連携
  • 現実の状態をリアルタイムで反映する体験

といったことも実現可能です。

やっている人が少ないだけで、「できない理由」は実はあまりありません。
つまり、アイデア次第で面白い仕掛けを作り放題!!!!!

夢もどんどん広がりますね!

理論上は可能

例)日照センサーと連携してメタバースのワールドの明るさと現実の太陽の動きを  
  連動させてみる。
例)リアルタイムの川や海の水位をワールドと連動させてみる。

おわりに

OSCは、派手な機能ではありません。

clusterでOSCが使える、という話自体もそこまで珍しいものではありません。

ただ、「それで何ができるの?」「結局、何が面白いの?」
というところまで踏み込んで語られることは、意外と少ない気がしています。

今回の記事では、正解や完成形を示すというよりも、
「こんな繋ぎ方もあるよ」という視点を紹介しました。

OSCは、使いこなせばすごい技術、というより「遊び方を少し広げてくれる道具」だと思っています。

clusterの中で、少し変わったことをしてみたい人の参考になれば幸いです。

ArduinoとOSCを使ったワークショップを開催します

2025年12月28(日)13:00から、clusterでワークショップを開催します!

その名も…

WORKSHOP IN METAVERSE
メタバースdeワークショップ!作る×学ぶ×つながる~clusterで学ぶ電子回路と遊びの世界~

この記事でも解説したOSCを使って、

Arduinoの基礎を学ぶ
Arduinoで簡単な電子楽器を作る
・作った電子楽器のコードを書き換え、OSC経由でcluster上で楽器演奏してみる

のような流れで、初心者の方でもわかりやすい電子回路のワークショップを行う予定です。

主催はセイ論主義の相方CHiHAYA氏ですが、私もいろいろ制作進めております!

clusterで自分だからこそできる企画はこれしかない…!
前例もないのでどんな内容になるか、自分でも未知数でわくわくしています。

少しでも興味があれば、ぜひ参加してみて下さい!!
あなたのご参加をお待ちしています!!

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