技術と開発

電子回路初心者が最後まで作りきった─メタバース電子工作ワークショップの実例

seironsyugi

メタバースで電子工作のワークショップを開催した!

……というと、少し変わった取り組みに聞こえるかもしれません。
ですが今回行ったイベントは、話題づくりや実験的な試みに留まらず、「実際に成立した一つの実例」として、これはちゃんと残しておきたいな、と思える内容でした!

なにより、参加して下さった方々が本当に頑張ってくれて……
「ちゃんと最後まで作りきれた」という事実を、もう少し色々な方に知ってもらいたい、という気持ちもあります。

この記事では、これから同じような立場で
「メタバースで何かを教えてみたい」
「ワークショップって実際どうなんだろう?」
と考えているクリエイターの方に向けて、
一つの参考事例として、役立てば良いなぁと思います。

どんなワークショップだったのか

今回私たちが行ったのは、cluster(アバターを使ったメタバースのSNS)上で開催する、電子工作のワークショップです。

題材にしたのは、Arduinoを使った電子楽器づくり
参加者それぞれが自宅で実際に回路を組み、最終的に「音を鳴らすところまで」辿り着く、というのをゴールに設定しました。

イベントは有料で開催し、材料は各自で事前に用意してもらう形式です。
メタバース空間では説明や進行、完成イメージの共有を行い、
リアルではそれぞれが手元で作業を進める、という少し変わったスタイルでした。

いわゆる「配信を見るだけ」「話を聞くだけ」のイベントではなく、
ちゃんと手を動かして、つまずいて、質問しながら進める
そんな、できるだけリアルのワークショップに近い体験を目指しています。

また、「音を鳴らす」のはリアルの楽器としての役割とメタバース空間で鳴らせる楽器を作るという2段階構成でした。
このような設計にしたのは、「メタバースでのワークショップが終わったら手元には何も残らない」という状態ではなく、成果物が手元に残り、その後も遊べるという状況にしておきたかったからです。

【画像:イベント会場全景】

想定していたのと、実際に来てくれた人たち

企画段階では、
「ある程度電子工作に慣れている人が中心になるだろうな」
という想定をしていました。

電子工作×メタバース、という時点で、
どうしてもハードルが高く見えてしまいますし、
(ご案内していた初心者セットだけでも5000円程度とワークショップイベントにしては高額です)
正直なところ「玄人向けイベント」だと思われるだろうな、という自覚もありました。

ところが実際に来てくれた方々の多くは、
「電子回路はほぼ初めて」

という、いわゆる電子回路初心者の方たちでした。

開発環境ダウンロードの説明中

主催側としては、少しドキッとしました。
この形式で、本当に最後まで辿り着けるだろうか、と。

想定していない部分で時間がかかり、結局4時間の大イベントとなりましたが、
結果として、ほぼ全員が回路を組み上げ、音を鳴らすところまで到達しました。
途中で詰まりながらも、質問したり、周りの様子を見たりしながら、
「自分で作ったものがちゃんと動いた」という体験に辿り着いてくれたのは、
今回のワークショップで一番嬉しかったところです。

3Dモデルで「ここを見てください」ができた話

今回のワークショップで、特に工夫したポイントの一つが、
説明を平面資料だけに頼らなかったことです。

電子回路の説明というと、配線図や写真、動画が一般的ですが、
初心者の方が詰まりやすいのは、
「今どの角度から見ればいいのか分からない」
「自分が見ている場所が合っているのか判断できない」
といった部分だったりします。

そこで今回は、回路構成を3Dモデルとして作成し、
それをメタバース空間に配置する、という方法を取りました。

空間に置かれた回路モデルは、
拡大したり、ぐるっと回したり、限界まで近づいて確認できます。
「ここを見てください」と言いながら、
全員が同じ立体物を同時に見られる、という状態を作れたのは、
メタバースならではの強みでした。

実際の配列の3Dモデルを見学しながら

見た目のため、というよりは、
初心者が迷子にならないための補助線として作った3Dモデル、という位置づけです。

前日に作り直すことになった話

少し裏側の話をすると、
今回のワークショップでは、一度完成していたワールドや説明構成を、開催前日に一部作り直しています。

理由はシンプルで、
「この説明順だと、初めて触る人は絶対に詰まるな」と気づいてしまったからです。
ワークショップ内では裏話として話しましたが、一部の部材が初心者向けではない、実装するためコツが必要ということが直前にわかりました。

0から作るよりも、
完成したものの一部だけを直す方が、なぜか大変だったりします。
変更点の確認が増えたり、影響範囲を見落としそうになったりして、
細かい調整が連鎖的に発生します。

それでも作り直したのは、
ワークショップが「分からないまま置いていかれる場」になるのだけは避けたかったからでした。

今でもこの「作り直す」という判断は正しかったと思います。

なぜ有料開催にしたのか

そもそもの話として、
この企画の原点は「有料イベントというものを、ちゃんと体験してみたかった」という個人的な動機でした。

そこから自然に、
「じゃあ、自分たちが“有料”でやるなら、どんな内容にするべきだろう?」
という問いに変わっていきました。

事前資料をしっかり作り、
想定できるトラブルをなるべく潰し、
前日であっても仕様を見直す。

こういった判断ができたのは、
お金を頂くイベントである、という前提があったからだと思います。

無料だったら、
「今回は実験だから」と、どこかで手を抜いてしまっていたかもしれません。

徹底的に懸念事項を上げて対策しました

今回のイベントでは、イベントの概要や準備日程などをまとめたシートを作成しました。他のイベントでも転用出来るように、一度入念に作ってみたかったんですよね。

イベント主催者さん達はこのような独自のノウハウのシートをみなさん持っていらっしゃってとても勉強になります。

まず下記のような、「イベント概要」シートと「懸念事項」シートを作りました。
最終的には変更になった部分も多いですし、最初に書いて満足して後半は見返す事も、時間的に忙しくてゆっくり見る時間も無かったのですが……

これを作ることで、行動にブレが無くなりました。

「やってみて楽しかった!」というのも大いにアリですが、このイベントはどのように自分たちの成長につながるのかも含めて一度振り返ってみたり……

懸念事項では、参加人数の想定が出来なかったので「15人超えなら補佐を1名追加」という取り決めをしていたのですが、結局15人を超えたのはイベント直前で補佐の確保が間に合わず……そのまま開催しました。
(チケット購入したけど予定が合わず……という方が多かったので、イベントは事なきを得ましたが、チケット購入者すべての方が参加して下さったらイベントはパンクしていたでしょう

ここは普通にイベント運営として反省点ですが、人員は多い方が良いですね……。

※実際にイベント準備で使用した、懸念事項・リスク洗い出し用のシート(一部抜粋)

小さなきっかけ、大きな発展

今回のワークショップでは、
メタバースで学び、
リアルで作り、
そのための材料やキットが実際に流通する、
という流れを意識していました。

三次産業(体験・サービス)をきっかけに、
二次産業(制作)、
一次産業(材料)へとつながっていく。

イベント自体は小規模でしたが、
それに伴って副資材が動き、
参加して下さった方がこの先また何かを作ったり、広げてくれたりすることを考えると、
このワークショップは、「小さなきっかけが、何か大きな発展につながる」のではないかと思っています。

次に向けて

次に同じような機会があれば、
テルミン風の電子楽器を題材にしたワークショップも構想しています。
ただし、やはり「有料イベント」じゃないと色々と気持ち的にも厳しいので、cluster運営さんにはぜひ有料イベントの常時利用が出来るよう、今後に期待したいところです。

この記事が、
同じ立場で悩んでいるクリエイターの方にとって
「こういうやり方もあるんだ」と思える材料になり、
そして一つの文化的事例として残れば嬉しいです。

「音縁電子版」を運営されている、永遠写工房代表 Tukkunさんにもこちらの記事を書いて頂きました。
あわせて読んで頂けると嬉しいです。
長時間に及ぶイベントでしたが、実際にイベントに立ち会って頂き、記事を書いて下さった事をとても感謝しています。ありがとうございます。

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